よくある胃腸の病気

機能性ディスペプシア (FD) とは

胃のあたりに様々な症状があり、それが長く続いているのに内視鏡でみても何もないことがよくあります。それがFDです。

人口の1〜2割がこの病気に悩んでいるといわれています。以下の症状が一つ以上あり、潰瘍や胃炎などがないのにこれらの症状が長く続くものとされています。

 

不快な食後のもたれ

食事開始後すぐに食べられなくなる、早期飽満感

みぞおちの痛み

みぞおちの灼熱感

 

これらの症状は、ストレスが繰り返されると悪化します。

また、この病気の人は胃の運動機能がおかしくなっており、胃の知覚(胃の膨らみ過ぎや、酸・脂肪への知覚)が過敏になっていることがわかっています。

治療としては、その効果は限定的ですが今の症状にあった薬を試みます。ただ、症状には幅があり、変わり易いのでその都度薬を調節、工夫します。

同時にストレスの回避あるいは克服を試みましょう。そして、不規則な食事と生活のリズムを見直します。とくに、早食いや食事の偏りを止めて夜型の生活を正します。


治療に工夫がいる[食道炎のない]胃食道逆流症

「逆流性食道炎といわれた」と来院される方が多くなりました。

ところが、内視鏡でみても食道炎が全くみられないことがよくあります。食道の下端にキズがないと食道炎とはいえません。

それは多分、頑固な胸焼けなどの症状のみから、逆流性食道炎[のようなもの]とされたに過ぎないのでしょう。

胸焼けを訴える人で、内視鏡でみても異常がない人は、6~8割に及びます。その症状は胃酸の逆流に応じて起きるので、制酸剤を連用しますが、その効きが今一つだったりします。そして、中には酸逆流量が少なめなのに症状がきつい人もいます。また、胃食道逆流症に食道運動機能低下が組み合わさると治療に工夫を要します。その上、腹痛、消化不良などの症状、さらに抑うつ、不安などを伴う人もいます。

このように食道炎がない胸焼けへの対処は意外に難しいものです。

 


「本当の」逆流性食道炎、裂孔ヘルニアなど

食道炎は、内視鏡でみると食道下端に胃酸に負けて生じたキズが一ヶ所、または複数ヶ所にみられます。

薬での治療により、キズがない人に比べてある人の方が症状をよく抑えることができ、キズ自体も改善します。しかし、キズは薬を中断することにより再発しやすい為、薬は継続することになります。

また、食道の下端に「円柱上皮化(バレット上皮化)」、さらに胃の入口に「裂孔ヘルニア」というものがあり、胃酸逆流と深く関係します。これらは、「本当の食道炎」と付かず離れずの関係にあり、三者は単独で存在したりときに併存します。その成り立ちは複雑です。ただ、治療あるいは生活上で注意しなければならない点に幾分の違いがあるとしますと、これらの有無を知ることは疎かにできません。


潰瘍性大腸炎は根気よくきめ細かい治療を

潰瘍性大腸炎の有病率は生活環境の変化に伴い、ここ10年で3倍に増加したともいわれており、なぜか20歳代の男性に急増しています。この病気は悪くなったり良くなったりを繰り返し、完治は難しいのですが、適切な治療をおこなうと腸の炎症を抑えた状態にできます(寛解といいます)

この抑え方が中途半端* ですと再燃しやすく、長年放置しますと癌の発生**も心配されます。

粘血便等の症状が長く続く場合には、早めの受診をお勧めします。

 

* 症状がよく抑えられていても、内視鏡検査でみるとおよそ2割の人に炎症が残っていることもあります。炎症が残存している場合は、再燃し易いとされていて油断はできません。炎症をゼロに維持する治療が最上といえます。

 

** 発病10年後から多くなりますので、病歴の長い人は定期検査を要します。見つけ難い形の癌が多いので、検査をきちんと行わなければなりません。


お腹の膨満感について

学童期から大人まで、お腹の膨満感に悩む人が多くなりました。人口の1〜2割ともいわれています。多くは、腸管の空気(ガス)* が多いとおきる機能性の症状です。これにはいくつかの類型があります。

 

①空気の飲み込みや便秘と関係し、生活状況の問題により生じやすい・・・子供に多くみられる

②機能性胃腸症(FD)、過敏性大腸(IBS)に伴う場合がある・・・成人に多くみられる

③FD や IBSの症状を満たさず、便秘もない場合もあり、これを機能性腹部膨満症という

 

ガスの量が一定以上になると不快感を伴うものの、膨満感の生じ方やその程度は様々です。不快感はその人の内臓の知覚の過敏によるところが大きく、ガスの量に左右されるわけではないとされています。治療は、主にガスの排出をよくする薬ですが、あまり有効ではありません。むしろ日常の生活の見直しなどが大切です。当然、便秘や機能性胃腸症、過敏性大腸の治療を並行して行います。


消炎剤の連用による胃腸障害について

近年、整形外科や内科領域で消炎鎮痛剤を連用している人が多くなりました。

これによる胃腸障害が問題になっており、連用者の1~2割に潰瘍が発生します。


① 一般の消炎鎮痛剤

【胃の場合】

無症状が多く、症状があらわれるのはかなり障害が進んだときです。内視鏡検査では、他のピロリ菌などによる潰瘍と異なる特徴があるので、それとわかります。原因となる薬剤は多岐にわたります。また、貼付剤も大量に使うと安心できません。


【小腸の場合】

胃よりも更に無症状が多いのですが、詳しく調べると連用者の半数に生じていたという成績もあるほどです。なお、小腸では胃で有効な制酸剤による治療が無効です。


② 低用量アスピリン

一般の消炎剤よりリスクが高いとされ、注意を要します。

【胃の場合】
全潰瘍の9%にものぼり、出血しやすいことが特徴です。また、潰瘍がなくても細かい傷跡や小出血がよくみられます。


【大腸の場合】
憩室(腸壁のくぼみ)がある人に突然の多量の出血がおきてしまうことがあります。